書き出しがかすれる、線が細く薄い――そんな「フローが渋い」状態は、乾き・汚れ・相性・環境のどれかが原因です。ここではいま手元でできる即効改善から安全な洗浄、インクと紙の見直しまで、順番に実践できる手当てをまとめました。
目次
インクの出が渋いときの即効改善
机の上で3分。まずはこれだけで様子を見ます。
- 少量送液(コンバーター式) ツマミを1~2目盛りだけ回し、フィードへ少しインクを送る。先端がにじんだらティッシュで軽く吸い取る。押し過ぎは厳禁。
- ぬるま湯で表面張力リセット 30~35℃のぬるま湯を用意。ペン先だけを2~3秒くぐらせて拭き取り、数行試筆。胴体や金属部まで浸けない。熱湯・アルコールはNG。
- キャップを閉じて1~2分 湿度を与えてフィードへ行き渡らせる。再度試筆。
- 紙を替える 光沢強めの紙で渋いなら、吸収の良い紙に変更。線の途切れと濃さを見比べる。
フローが渋い原因を見極めるチェック
- 乾燥・インクの固着:長期未使用/エアコン直下/キャップ閉め忘れ → 応急後、洗浄で改善しやすい。
- 供給ルートの抵抗増:フィードの汚れ、コンバーターの気密低下、残量不足 → 洗浄+部品点検。残量は常に1/4以上が安心。
- 相性問題:インクの粘度・潤滑性、紙のコート強度 → インク/紙の見直しで改善。
- 筆記習慣:筆圧強め・寝かせ書き・超高速ストローク → 筆記角14~45度、筆圧は軽く。止めるときは即キャップ。
安全にできる洗浄手順(家庭編)
道具:コップ2個、常温水、シリンジ or コンバーター、専用洗浄液(ペンフラッシュ)、吸水紙
- 水すすぎ(基本) コンバーターで水を吸って→出すを繰り返し、排水が透明に近づくまで。ニブは軽く振る程度。
- 専用洗浄液(固着気味のとき) 説明書どおりに希釈→吸入→数分置く→排出→水ですすいで完全除去。
- 乾燥→再装填 先端を吸水紙でチョンと当てて水分を抜く。インクを充填し、数行書いて安定化を待つ。
家で難しいケースの見分け方(プロ依頼の目安)
- 何度洗っても書き出しが極端に悪い
- スリットの重度詰まり/アライメントずれの疑い
- 落下でニブが曲がった・割れた
- フィード割れやコンバーターの明確な気密不良
依頼前に、症状・使用インク・期間・再現条件(紙・温湿度)・写真をまとめておくと話が早いです。購入店、メーカーサポート、修理専門店の順で相談を。
自分で再現できる簡易テスト(実機向け)
- 室温20~25℃・湿度40~60%、筆記角約30度で統一。
- 横線を20本引き、途切れ本数をカウント。
- 洗浄後に同条件で再テスト。
- 紙は**A(低吸収)/B(中)/C(高)**で比較。 → 例:Before 7/20 → After 2/20、紙Cで0/20。数字で把握すると最適解が決めやすくなります。
よくある質問
Q. 洗浄の目安は?
A. 毎日使用で1~2か月に1回、色替え時は毎回。長期未使用後は再開前に洗浄。
Q. ぬるま湯は何度くらい?
A. 30~35℃。熱湯は樹脂や接着に悪影響。
Q. 真鍮シムでの清掃は?
A. 誤ってスリットを広げるリスクが高く非推奨。重症はプロへ。
Q. 顔料→染料に替えると改善する?
A. 可能性はあるが、完全洗浄が前提。まずは洗浄で様子見を。
まとめ:
渋いときは①少量送液 → ②ぬるま湯で先端リセット → ③キャップで1~2分 → ④紙を替えて確認。改善しなければ洗浄し、あわせてインク/紙/筆記角を見直す。日常はキャップ即閉・残量1/4以上・月1~2回の洗浄を習慣に。落下やニブ不良など“家庭で難しい症状”はプロに任せよう。

