コンバーターは、万年筆に「好きな色のボトルインク」を使えるようにする小さな部品だ(繰り返し使える吸入器のこと)。本稿では種類の違いと選び方をまず整理し、ツイスト式/プッシュ式それぞれの吸入手順を解説する。差し込み不足・空気混入・漏れを避けるコツ、最小限の道具、片づけまでをやさしく解説する。
目次
この記事で解決できること
- どのコンバーターが自分の万年筆に合うか
- ツイスト式/プッシュ式の正しい吸入手順
- インクが入らない・漏れるなどの失敗を防ぐ方法
- 必要な道具と簡単な片づけ手順
コンバーターとは
コンバーターは、カートリッジ(使い捨てインク)を繰り返し使える部品に置き換えるための道具である。
ペン軸の後ろ側に差し込み、ノブを回したり押したりしてインクを吸い上げる仕組みだ。
カートリッジとの違い
カートリッジは差すだけで使えるが、色が限られ、1回使い切りだ。
一方コンバーターは、ボトルインクを自由に選べる。そのぶん手間は少し増えるが、好きな色・粘度・表現を楽しめるのが魅力である。
主な方式
- ツイスト式:後ろのノブを回してピストンを上下させ、吸入するタイプ。多くの国産万年筆で採用。
- プッシュ式:ノブを押して戻す「ポンピング方式」。ラミーやパーカーに多い。
専用・互換の違い
万年筆の内部構造はブランドごとに異なるため、基本は純正コンバーターを使うのが安全。
差し込み口(インクの通り道)や刻印の形状で判別できる。
あなたの万年筆に合うコンバーターを選ぶ
コンバーターを選ぶときは、まずブランドと型番を確認する。
首軸(ペン先側の筒)を外すと、刻印や品番が見える。
| ブランド | 対応コンバーター例 |
|---|---|
| PILOT | CON-40 / CON-70 |
| SAILOR | 純正コンバーター |
| PLATINUM | 純正コンバーター |
| LAMY | Z28(サファリ、アルスターなど) |
| ペリカン | コンバーター P1 |
| モンブラン | コンバーター MB-CV |
ツイスト式の吸入手順(写真で確認したいポイント)
用意するもの
- ボトルインク
- 柔らかい布またはティッシュ
- 小さなコップ(すすぎ用の水)
取り付け方
- ペン先側(首軸)を外す。
- コンバーターをまっすぐ奥まで差し込む。 → この時、差し込みが浅いとインク漏れの原因になる。
吸入の手順
- ペン先ごとインクに浸す(通気穴=“息抜きの穴”が隠れるまで)。
- ノブを反時計回りに回して空気を抜き、時計回りで吸い上げる。
- この操作を2往復ほど繰り返すと、気泡が抜けやすい。
- ペン先を持ち上げ、余分なインクを布で軽く拭き取る。
小ワザ
・最後にノブを少しだけ逆回しし、空気を逃がすと筆記時のかすれが減る。
・首軸の内側(インクがたまる部分)も軽く拭いておくと、持ち歩き時に安心。
プッシュ式(ポンプ式)の吸入手順
プッシュ式は、押して戻す動作で空気とインクを入れ替える。
- ペン先をインクに浸す(通気穴が隠れる深さ)。
- ノブを押し下げて戻す。
- これを3~5回くり返すと、空気が抜けてしっかり吸える。
- 吸入後は、ペン先を上向きにして2~3秒キープ。気泡を上に逃がす。
- ペン先を軽く拭き、首軸を取りつける。
よくあるトラブルQ&A
Q1. インクが入らない
→ 差し込み不足、または通気穴がインクに浸っていないことが多い。
もう一度しっかり奥まで差し込み、深めに浸す。
Q2. 漏れる/手が汚れる
→ 首軸の拭き忘れが原因。組み立てる前に、余分なインクをティッシュで軽く押さえる。
Q3. かすれる・書き出しが薄い
→ 空気混入か、インクの粘度が高い。インクを替えるか、再吸入してみる。
Q4. コンバーターが外れる
→ 差し込み口の摩耗や個体差。
無理に押し込まず、Oリング(ゴムパッキン)を薄く潤滑する程度にとどめる。
手入れと片づけ(色替え・月1回の習慣)
- ぬるま湯を小コップに入れる。
- コンバーターを装着したまま吸って→吐き出すを3回ほど。
- 水が透明になったら終了。
- 自然乾燥させ、完全に乾いてから再装着。
はじめの一本はこの色から
インクの色選びは、書くシーンに合わせるのがコツだ。
| 用途 | おすすめ色 | 理由 |
|---|---|---|
| 仕事・ビジネス | ブルーブラック | 読みやすく、にじみにくい |
| 手帳・日記 | グレー/ターコイズ | 個性が出やすいが落ち着いた印象 |
| 手紙・趣味 | セピア/ワインレッド | 温かみがあり紙映えする |
字幅はまずF(細字)が万能。
極細(EF)は手帳や細い罫線に、中字(M)は便箋やカードに向く。
あると安心の補助ツール
- シリンジ(スポイト):掃除時に水を吸わせるときに便利。
- クリーニング小瓶:ペン先洗い専用に使うと汚れが広がらない。
- 柔らかい布・下敷き:机や指先を守る。
まとめ
コンバーターを使えば、万年筆の世界は一気に広がる。好きな色を選べる自由と、手をかける時間の心地よさ。
一度コツをつかめば、吸入も洗浄も数分で終わる。
今日のインクを吸って、明日の文字が少し楽しくなる——それがコンバーターの魅力だ。

