万年筆を選ぶとき、いちばん迷うのが「字幅」だと思う。EF、F、M…と並んでいても、実際どれが自分に合うのかは、書いてみないとわからないものだ。この記事では、それぞれの字幅の特徴と「どんな使い方に向くのか」をわかりやすく解説する。購入前の“後悔しないための目安”として役立ててほしい。
目次
万年筆の字幅とは?まず知っておきたい基本
「字幅(じはば)」とは、ペン先が紙の上で描く線の太さのこと。
ただし、単純に「ペン先の金属部分(ニブ)の太さ」ではない。紙に触れる角度やインクの出方、筆圧などで線の太さが変わるため、“見たときの線の太さ”=字幅と考えるのが正しい。
たとえば同じ「F(細字)」でも、パイロットのFはLAMYのEFくらいの細さ。
これは、国産は細め、海外ブランドは太めの傾向があるためだ。
主な字幅の種類と略称
記号 | 呼び方 | 特徴 |
---|---|---|
EF | 極細字 | 手帳など細かい字に向く |
F | 細字 | バランスが良く初心者向け |
M | 中字 | 発色が良く、手紙やノートに最適 |
B | 太字 | 滑らかで存在感のある線 |
Stub / Music | 特殊字幅 | 横細・縦太など、装飾的な筆記向け |
字幅で変わる「書き味」と「見え方」
字幅は見た目の太さだけでなく、書き味の“気持ちよさ”にも大きく関係している。
紙への抵抗感、インクのにじみ、発色の美しさ──すべて字幅で印象が変わる。
細字(EF・F)の特徴
・手帳やメモなど、細かい字を書きたい人にぴったり。
・インク量が少ないので、裏抜けしにくく、ビジネスノートでも安心。
・ただし、紙がざらついていると引っかかりを感じやすいことも。
細字=“繊細で正確”。ただし滑らかさよりも「コントロール重視」の書き味だ。
中字(M)の特徴
・いちばんバランスが良い字幅。
・インクの発色がきれいに出て、書く楽しさを感じやすい。
・手紙や日記など、じっくり書く用途に向いている。
太字(B以上)の特徴
・筆圧が弱い人でもスルスルと滑らかに書ける。
・線に表情が出るため、サインやメッセージカードにもおすすめ。
・ただし、ノートでは裏抜けすることがあるため、紙質に注意。
太字は「書く快感を楽しみたい人」に。発色が濃く、インクの濃淡(グラデーション)も出やすい。
失敗しない字幅の選び方【用途別・相性表つき】
用途 | おすすめ字幅 | 理由 |
---|---|---|
手帳・スケジュール帳 | EF・F | 細かい欄でも読みやすく裏抜けしにくい |
ノート・日記 | F・M | 太すぎず細すぎず、発色がよい |
手紙・サイン | M・B | 存在感のある線が出る |
万年筆初心者 | F・M | 失敗が少なく、書き味を感じやすい |
紙質との相性で変わる印象
紙がざらざらしていると、細字は引っかかりやすく太く見えやすい。
逆に、つるつるした万年筆用紙ではインクが広がらないため、同じFでも細く見える。
「いつも使う紙」を基準に選ぶと失敗しにくい。
インクの発色でも変わる字幅の見え方
濃い色のインク(黒・青など)は線が細く見え、淡い色(グレー・ターコイズ)は太く見えやすい。
つまり、同じペンでもインクによって印象が変わる。
ブランド別の傾向を知っておく
ブランド | 字幅の傾向 | コメント |
---|---|---|
パイロット / プラチナ / セーラー | 細め | 日本語の細かい筆記に最適 |
LAMY / Pelikan / Montblanc | 太め | 欧文ベースで、線に丸みがある |
試筆できないときの判断基準
店舗で試し書きができない場合は、以下の3つをチェックしてみよう。
- 同ブランド内での比較表を見る(メーカー公式サイトに掲載されていることが多い)
- レビュー写真の線幅を見る(紙とインクの条件も確認)
- 最初の一本なら「国産F」または「海外EF」が無難
よくある疑問Q&A
Q1:同じ「F」でもブランドで太さが違うの?
→ はい。字幅の基準は各ブランドで異なるため、必ずしも共通ではない。
Q2:書いているうちに字幅は変わる?
→ ペン先が紙に慣れる「なじみ」で、やや滑らかになるが、太さが大きく変わることはない。
Q3:あとから字幅を変えることはできる?
→ メーカーでのニブ交換が可能なモデルもある。ただし、自分で研磨すると保証対象外になるので注意。
まとめ|自分に合う字幅を見つけるコツ
・「どんな紙に」「どんな字を書きたいか」を先に決める
・国産F=海外EFを目安に考えると安心
・書き味を楽しみたい人は、少し太めを選ぶと満足度が高い