万年筆がすぐ乾いて書き出しがかすれる——そんな悩みは、空調や湿度、キャップの気密、インクの性質、保管姿勢など複数要因の重なりで起こります。本記事は「今すぐできる対策」と「根本から乾きにくくする習慣」を実機目線で解説。乾かない万年筆の選び方、インクの見極め、季節・オフィス環境別のコツ、やってはいけないNGまで網羅。
目次
【結論】万年筆 乾く 対策の全体像(まずはここから)
すぐ試せる3つのコツ
- キャップはこまめに閉める。小休止や電話の前も一度締める
- 書いた後にペン先を軽くひと拭き。薄いインク膜の固まりを防ぐ
- 机では水平に置く。持ち運びはペン先を上に
根本対策(数日〜数週間で効いてくる)
- 週1回の水洗い(フラッシング)。ぬるま水で十分
- 気密性の高いキャップの万年筆にする(インナーキャップ付き)
- インクを見直す。まずはメーカー純正の染料インクから
今すぐできる応急処置(仕事中・外出先)
初筆のカスレを手早く戻す
- ペン先を軽く湿らせてから乾拭き。ハンカチに水を少量つけて先端をトントン→ティッシュで軽く拭く
- 気泡抜き。キャップをしたまま万年筆をやさしく数回振る、またはボディを指で軽くトントン(強く振らない)
- 紙を替える。コート紙やツルツルの紙はインクが乗りにくい。普通紙や万年筆向け紙に
やってはいけないこと
- 息を吹き込む、口で湿らす(汚れや塩分で固まりやすくなる)
- アルコールやシンナーで拭く(樹脂や塗装を傷める)
- 激しくシェイク(インク漏れや破損の原因)
原因を知る:万年筆が乾く仕組み
キャップの気密(インナーキャップの有無)
キャップ内に二重構造の小さなフタ(インナーキャップ)があると、内部の湿気が保たれて乾きにくくなります。ない場合や密閉が甘い個体は、書き出しがカスれやすくなります。
低湿度・強い空調・直射日光
冬やエアコン直撃の席は空気が乾燥しがち。直射日光や夏の車内放置も乾燥と漏れの両方に悪影響です。
インクの性質(染料/顔料)
- 染料インク:扱いやすく普段使い向き。まずはこれを基準に
- 顔料インク:にじみにくく耐水性が高いが、長く放置すると固まりやすい。使用頻度が低い人は注意
使用頻度と薄い膜
書いていないあいだにペン先のインクが薄い膜になって乾くと、次に書くときカスれます。毎日少しでも書くと予防になります。
乾かないための日常ルーティン(メンテ・保管)
週1フラッシングのやり方(安全版)
- ぬるま水を用意(お湯はNG)
- カートリッジ/コンバーターを外し、吸って→吐いてを数回
- 水がほぼ透明になるまで繰り返す
- 半日〜一晩、自然乾燥。ペン先を下にしてキッチンペーパーに立てると速い
- 乾いたら装着して試し書き。洗剤やアルコールは基本不要
保管と持ち運びのコツ
- 机では水平、持ち運びはペン先上
- キャップオフは30秒以内を目安に
- ペンケースは通気しすぎないものが安心
乾きにくい万年筆の選び方(1〜5万円の範囲で)
1. 気密キャップを最優先
商品説明に「インナーキャップ」「気密」「乾きにくい」の記載があるモデルを選ぶと失敗しにくい。カチッと密閉感のある閉まり方も目安。
2. 字幅はF〜Mが無難
- EF〜F(細字):細い線だが、乾きの影響を受けやすい
- M(中字):インクがやや多めに出て書き出しが安定。迷ったらM寄り
3. ニブとフィードの仕上げ
試し書きできるなら、引っかかりが少なくスムーズに出る個体を選ぶ。調整が必要なら専門店へ。
4. カートリッジとコンバーター
- カートリッジ:携帯に強く、気密を保ちやすい
- コンバーター:好きなインクを使える自由度。その分メンテはこまめに
乾きにくいインクの選び方
まずは純正の染料から
メーカー純正は相性が安定。ペン先のすべり(潤滑)も程よく、乾きにくい体感につながります。
顔料インクを使うときの注意
- 週1回以上書くなら問題なし
- 2週間以上使わない見込みなら、洗って保管が安心
- 細字で顔料を使うときは、書き出しのカスレが出やすい点を理解しておく
比較早見表:対策のチェックポイント
| 観点 | 推奨 | ポイント |
|---|---|---|
| キャップ構造 | インナーキャップ有 | 二重フタやパッキン付きが安心 |
| 字幅 | F〜M | 安定重視ならM寄り |
| インク | 純正の染料 | まずは基準作りに最適 |
| 保管 | 水平・ペン先上 | 低湿度時は加湿を意識 |
| メンテ | 週1フラッシング | ぬるま水・自然乾燥 |
やってはいけない対策(NG集)
- 添加物(グリセリンなど)を混ぜる。詰まりの原因になる
- 自己流の分解・研磨。破損や保証外の原因。調整は専門店へ
- キャップをゆるく締める、高温放置。乾燥・漏れ・変形のリスク
よくある質問(Q&A)
数日使わないときは?
洗って完全に乾かして保管が理想。インクを入れたままならペン先を上にし、直射日光は避ける。
キャップレスは乾きやすい?
内部にシャッターがあり、通常の使い方なら問題ありません。使わない時は必ずノックを戻し、先端を清潔に。
顔料インクを安全に使うコツは?
普段は染料、耐水が必要な書類だけ顔料など使い分け。顔料を入れたら早めにフラッシングする。
まとめ(チェックリスト)
- 今日から:キャップをこまめに締める/書いたらペン先をひと拭き/水平保管
- 週1:ぬるま水でフラッシング→自然乾燥
- 道具選び:インナーキャップ有+F〜M字幅+純正の染料インク
- 環境:湿度40〜60%、空調の風は避ける

